次に
あなた−−−−
どうしてますか−−−お元気ですか。
すきま風に、耐えながら、機を織る指先が呼びかける。
着てもらえる当てはない−−−
空虚なこころを、時間を埋めるには、手を動かすほかにない。
春がきたら。春になったら−−−。
この想いだけで、毎日機を織る女に透明な時間が過ぎてゆく。
都 はるみ 「北の宿から」。
あなた変わりは ないですか
胸がしんしん 泣いてます
この万葉の旋頭歌は、いま名曲によみがえる。
この歌の着物を織りつづけた女と、着てはもらえぬセーターを編んだ女。
こつこつと積み重ねる中に、忘却と追憶を編み織る日々。
春夏秋冬−−−−−
過ぎ去った冬、春、夏、秋が万華鏡のように回転し変化する。
この女の四季は冬−−−−春夏秋。
冬は機の糸のように、あまりにもながい−−−−。
おもう糸が切れるのがこわいから・・・・織りつづける−−−−。
投げても・・・・届かない想いの糸。
でも、織りつづけていれば−−−春は・・・必ず、かならず、間違いなく来る。
私は、この花に、雪の白さを、蕊柱に春を待つ女こころを、
−−−−Lipに、こころ映えの麗しさを掬ったが、どうであろうか。
このような花を見ると、
ゆるぎない完成された名花に覚えることのない、
掬い抱いてやりたいような、息の詰まるような感じになる−−−−。
宇井 清太
yuyu tumugi
Memory
Arcadian Promenade
二つのイラストはこの歌と花の情感イメージを、この花から画像処理で創って見ました。万華にするとこの花の美しさが際立ちます。
あなたに着せようと想って、手が疲れるまで骨折って織った着物ですよ。春になったら、どんな色に摺って染めたらよいのでしょうか・・・・。
きぬ
たじから
君がため手力疲れ織りたる衣ぞ春さらば
いかなる色に摺りてば好けむ
作者未詳 万葉集
y
uyu tumgi